低温脱硝装置の提案でCO₂排出量を大幅削減

低温脱硝装置の提案でCO₂排出量を大幅削減

東レエンジニアリング㈱ プラント事業部(以下TRENG)は医薬品・ライフサイエンス、ファインケミカル、フィルムなど各種プラントの設計、機器調達、建設工事、設備工事、試運転までを行う。その一つである、半導体用材料製造設備向けに提案した低温脱硝装置が二酸化炭素(CO₂)排出削減に貢献している。

既存の脱硝装置の課題

お客様に導入した設備は生産中に約250℃のガスが排出される。この排出ガスには窒素酸化物(NOX)が含まれており、排出する前に除去する必要がある。このため排出前に排出ガスを脱硝装置に通す必要があるが、従来の一般的な脱硝装置ではLPガスバーナーで300℃以上にまで排出ガスを加熱しなければならない。脱硝装置の基本性能として触媒が300℃以上で脱硝機能を発揮するためだ。一方でLPガスの燃焼によってCO₂が多く発生してしまうという課題があった。

低温でも機能する脱硝装置を提案

TRENGは、低温においても機能を発揮する脱硝装置を提案した。これにより、従来のように300℃以上にまで排出ガスを加熱する必要がなく、従来の約60%の温度(175℃以上)でNOXを除去することが可能となった。予熱運転を除いた生産中の排出ガスの高い温度までの加熱が不要になるため、LPガスの消費量を削減することができ、生産時のCO₂削減につなげた。

当初、お客様からは新工場建設に際して生産性の向上だけでなく、カーボンニュートラル対応など最新技術を導入したいとの要望があった。お客様製品のエンドユーザがカーボンニュートラルを重視し、CO₂削減を求める傾向が強まっていたことが背景にある。このため、新工場においてTRENGはこれまで手掛けていなかった脱硝装置にも着目した。

設置する装置を検討・探索する中で、株式会社日本触媒製の脱硝装置は硫黄分が含まれていない事を前提に、低温での脱硝が可能であることが分かった。また、お客様の排出ガス成分調査で硫黄分が含まれていない事も分かっていた。これらの情報をつなぎ合わせることで、250℃の排出ガスを高い温度に加熱する必要の無い、低温脱硝装置を提案するに至った。

175℃の低温でも機能する低温脱硝装置(株式会社日本触媒製)
175℃の低温でも機能する低温脱硝装置(株式会社日本触媒製)

TRENGはこの低温脱硝装置を含めた半導体用材料製造設備の新工場建設全てに携わり、6系列の低温脱硝装置を導入した。1系列当たり年間約30トンのCO₂排出量を削減できるため、6系列合わせて年間180トンのCO₂削減が見込まれている。この成果はお客様から高く評価され、既存設備の脱硝装置についても低温タイプへの変更が検討され始めている。

柔軟な提案力で顧客ニーズに応え続ける

TRENGはお客様のニーズに合わせてプロセス、装置、機械を提案できるのが強みだ。今や、カーボンニュートラルに向けたCO₂削減など環境対応は製造業にとって大きな課題になっている。低温脱硝装置を導入したお客様に対しては更に排熱回収し予熱に再利用する改善提案なども行っている。TRENGは今後もこうした環境対応も含めたお客様のさまざまな要望に応えていく。

東レエンジニアリンググループは、これからもお客様に提供する先端技術や製品を通じて世界的な課題解決を実現する「サステナブル・エンジニアリング」を推進していきます。