複合材料用3Dプリンターの開発について
2020年1月28日
総務部広報宣伝課
東レエンジニアリング株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役:岩出 卓、以下東レエンジニアリング)は、複合材料に対応した3Dプリンターを開発しました。東レエンジニアリングが新たに開発した「コアシェアル方式」と呼ぶコンセプトを用い、複合材を造形する3Dプリンターにおいて問題とされていた強度の異方性を解消しました。この3Dプリンターの実機は、2020年1月29~31日に東京ビックサイトで開催される展示会:TCT Japanにおいて、成形品と共に展示します。
複合材料をめぐる3Dプリンターについて
ラピッドプロトタイピングツールとしてスタートした3Dプリンターは、現在多品種少量生産・超複雑形状・何加工性材料対応を特徴に持つ生産設備として、急速に適用範囲を広げています。当初は主に樹脂材料を用いていましたが、その後金属や複合材料にも適用されています。
これまで、炭素繊維強化複合材(CFRP)やガラス繊維強化複合材(GFRP)を対象とした3Dプリンターには、(1)樹脂を含侵させた連続繊維と樹脂を一緒に押し出しターゲットの形に「並べる」方法や、(2)0.1から0.2mmの短繊維を混錬した溶融樹脂を押し出し「並べる」方式のものがありました。しかしいずれの方法も、造形界面で強化繊維が分断されることから、成形品の強度に異方性が発生し、複合材料としての特色を(強度)を十分に発揮することが出来ませんでした。
「コアシェル方式」について
東レエンジニアリングは、今回新たに「コアシェル方式」と呼ぶ3Dプリンタープロセスを新たに開発し、3Dプリンターで造形した複合材料製品における強度異方性という課題を解決しました。
コアシェル方式とは、以下のプロセスで構成されます。
- まず、シェルと呼ぶ型枠に相当する部分を3Dプリンターでつくり、
- 次に今回新たに開発した高流動性の複合材樹脂を型枠内に流し込み、
- ①と②を繰り返し製品形状を完成させ、
- 最後に加熱して複合材樹脂を硬化させる。
また、コアシェル方式を実現する3Dプリンターのハードウエアは、ナブテスコ株式会社の子会社で3Dプリンターメーカーであるシーメット株式会社と共同開発しました。今回TCT Japanに出展する3Dプリンターは、20cm×20cmと手のひらサイズの製品に対応し、2020年度内にテスト販売等を開始、価格は3000万円程度を想定しています。
今後について
今回の3Dプリンターの開発に合わせ、東レエンジニアリングは新たにエポキシ樹脂をベースとする高流動性炭素繊維複合材樹脂を開発し、3Dプリンターと共に、素材の供給も行います。今後は、介護用品(義手・義足・車椅子部品等)やスポーツ用品などの完全オーダーメード製品や、自動車・航空機・ロボットなど軽量かつ高強度が要求される多品種少量生産の機械部品をターゲットに展開し、5年以内に10億円規模の事業を目指します。
<東レエンジニアリング株式会社について>
東レエンジニアリングは1960年東レ株式会社の工場建設・生産設備の保全を担う会社としてスタートし、現在では国内外12社の関係会社も含め2,000名以上の従業員を有する、東レグループにおけるエンジニアリングの中核を担う会社です。
東レエンジニアリングは「エンジニアリング事業」と「エレクトロニクス事業」の2つの事業を持ち、「エンジニアリングとものつくり」でお客様のニーズにお応えしています。
以上